2007年08月23日

改正建築基準法は抗がん剤?

 先日、民間検査機関で確認新申請と計画変更申請を提出しやっとのことで済証をもらった。2物件とも木造の住宅であったが、はっきりいって「なんだぁこれは?」。姉歯の偽装を受けての基準法改正であるらしいが、なぜか生理的になじまない。とくに改正以後は書類の誤字脱字と図面の整合性にきびしい。訂正印は一切ダメ。すべて差し替え。図面に市町村の経由印が押してあっても、差し替えることで再度経由印をもらわなくてはならない。
 そこで一例をあげれば、弊社が出した確認申請書のなかで、洗面室の洗面器の形が平面図(1/00)と設備図(1/100)とで食い違っていた。担当者からは「図面に相違があるので差し替えて欲しい」と言われた。「これが基準法と何の関係が・・!」と、のどまで出かかっていた文句を飲み込みながら、やむなく差し替えた。文句を言ったところではじまらない。改正以前ならこんな(つまらない?)ことは指摘されなかった。担当者本人も「何でこんなこと指摘しなくちゃいけないのか」と多分思っているだろう。いじめてやろうというサディストでないかぎり。
 設計図面を描くというのは、何千何万という情報を図面化しなければならない、素人から見れば気の遠くなる作業。そこにクライアントの要望やコストが絡んでくれば設計変更はついて回るし、その変更を繰り返しながら成果をあげていく作業でもある。いわば、「スパイラル」を描きながら少しずつ精度をあげていくのが特性である。図面に食違いはあってはならないが、スパイラル作業過程の中で過去と未来の情報すべてに整合性を満たすことは不可能に近いし、合致させても意味がない。(自己弁護ではなく事実を言ってます)
 人間はある時点で「あーしたい」と思っても、いざ現場が始まり、家の形が見えてくれば「やっぱりこうしたい」というのが常。だからこそ現場監理がある。実際に建ってはじめてイメージが湧くというクライアントがほとんどである。住宅建設という過程は、設計期間や工事期間を含めおおよそ1年という長い歳月が必要である。確認申請は設計と施工の中間点に行う作業。だからこの段階では、法的に適合していることのみを集中して審査すればよい。洗面器の形が違うことを指摘して一体どんな意味があると言うのだろう。逆を言えば「確認許可以降は些細なことでも現場での変更は認めません」ということを意味する。(実際には、洗面器などは設計段階で、クライアントをショールームに案内し、現場が始まれば再度それを確認してから発注をかけている。決めるのに二転三転するからである)設計の段階ですべてが決定されるのではない。
 姉歯で地に落ちた業界の信頼回復と、不正を常とする業者を正す・・・と言う意味では一定の品質が守られるので効果はあるかもしれないが、それ以上の自分の気に入ったもの造りたいと願っているクライアントや、その要望を叶えてあげたいと頑張っているまともな設計事務所にとっては、現場で試行錯誤が出来なくなるのは、いいものを造ろうとする意思にストップをかけてしまう。それは丁度、侵食する悪い細胞には効果を発揮するが、反面良い細胞まで破壊してしまう「抗がん剤」のような・・・と見方を変えればそんな風にも写る。
 こういったことを盛り込むことを提案し、決定した中央省庁のエリートは、ナイフで怪我をしながら試行錯誤して工作を仕上げていく・・・「ものを造るとはどういうことか」という基本的なことを経験しないまま大人になった人ばかりじゃないかなあ・・・と教育方針のあり方を横目で見ながら、反面気の毒になったりもする。
 以前俳優の織田裕二が出ていた「踊る走査線」で青島刑事が「事件は会議室で起こってるんじゃない、現場で起こってるんだ!!」ていう台詞があったけど、勉強してエリート官僚もいいけれど、やはり私は現場第一主義でありたいと改めて思った今回の法改正である。
by Ryuわーい(嬉しい顔)


posted by ばばちゃん at 17:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 言いたい放題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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